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卒業制作『うつろい ⅳ』2012

―現在制作しておられる作品・活動内容、またはご職業について詳しく教えてください。

 

 

現在は沖縄県立芸術大学で務めながら各地で展覧会を行っています。

 

 

 

―大学時代についてお聞きします。どのような大学生活を送りましたか。

 思い出に残るエピソードなどがございましたら是非教えてください。

 

 

漆芸分野では、縛られたり概念を押し付けられることがなく、自由に制作をさせてもらいました。

学生生活で記憶に残っているのは、学部3年生のとき作品制作に取り掛かる前先生にチェックを受けていたときのことです。何度も先生に自分の思いを伝えていたのですが伝わらず、「キャメロン(当時のあだ名)の言っている意味が分からないから、作品作る前に論文書いて来て」と言われ、10枚程度のレポートを書いたことがありました。

早く制作に取り掛かりたいと思う中で、本を読み、考えを文章にするのはしんどいものでしたが、本を読みながら、自分の考えの未熟さやもっと知らなければならないこと、知りたい事、自分の興味の原点に気づくことができたように思います。

なにより、向き合い考えているつもりでいたことが全く深く考えられていなかったことに驚きました。

今読み返すと大変未熟で不完全なとても恥ずかしい文章ですが、自分の考えを確立させていくうえで、重要な節目としてとらえています。

このような経験をさせていただけたことで、作品制作に入るまでの思考のプロセスの重要さを知ることができ、日々の生活の送り方や、感じたこと、情報などに対して、丁寧に考え向き合うよう心がけるようになりました。

この日々の送り方はこれから私に沢山の財産を残してくれるのだと思います。

(左から)卒業制作『うつろい ii』『うつろい iii』『うつろい iv』2012

―卒業・修了作品について紹介してください。

 

タイトル 【 うつろい ii.iii.iv 】

制作年 【 2012 年 】

 

修了制作は現在でも続くシリーズ作品の初期のものです。

麻布を漆で貼り重ねることにより成形する乾漆という技法で制作していて、漆が数十年という長い年月をかけてゆっくりと硬化(収縮)するという特質に着目し、環境に応じて造形が変化するという【動く工芸品】をつくりました。

 

 

 

―卒業・修了作品展の経験は、その後の制作活動や現在のお仕事にどのような影響を与えていますか。

 

 

学部4年生のころから世間的に良いといわれている漆芸作品や、他人からの評価などに共感できないことが多くなり、自分の価値観がかなり固く狭いということを感じはじめました。自分の作品に対しても否定的で、自分の作品を他人事のように酷評している自分がいて、どう制作をしていけばよいのかわからない時期がありました。

そんな中制作をつづけるために、院の2年間と修了制作では、自分の好奇心に忠実に、実験のような作品を作りました。それまでの作風とは違うもので、向いているのかな、と思い始めていた手法も手放しました。

今でも作品と呼べるのかわかりませんが、その実験ともとれる作業がとても楽しかったのを覚えていて、大切にしたいと思いました。いまだにその延長線上にいて似たようなことを繰り返しています。

(左から)『うつろい』2011、『boundaryline iv』2012、『time&space ⅳ』2014

―卒業生として、後輩に向けてメッセージをお願いします。

 

 

自分が一番純粋に向き合えるものを大切にしてください。

赤口朱合漆椅子』2015』

小川 恵 Ogawa Kei

 

 

学生時代の専攻:漆造形

卒業年:2012年

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